【小さな山旅】「割れ山」の思い出…茨城県・竜神山(1) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】「割れ山」の思い出…茨城県・竜神山(1)

オピニオン コラム

「割れ山」こと、竜神山の遠景。茨城県石岡市にある。
  • 「割れ山」こと、竜神山の遠景。茨城県石岡市にある。
  • 竜神山の近景。採石会社の建物が見える。採石の噴煙が上がっている。
  • 染谷佐志能神社がある山を登ると、採石の現場が見おろせた。
それは、筆者が山に興味すら持っていなかった頃のこと。祖父母の家が茨城県土浦市にあったので、何かとそちらの方面に出かけることが多かった。その道中の車窓から見える景色に、不思議な山があった。

何が不思議かというと、ひとつの山がパックリと真っ二つに「割れて」いるように見えるのだ。山が割れるなんてこと、あるものだろうか。疑問を抱きながらも、通るたびにその山を眺めると、やっぱり割れているようにしか見えない。その山を「割れ山」と勝手に名付けた。

それから20数年経ったのち、山に登るようになった。筑波山や八溝山などの茨城県の山々から、近隣の県の山々へ、週末になると登りに出かけた。そうしているうちに、ふと「割れ山」のことを思い出した。

「割れ山」こと、竜神山の近景

割れ山、割れ山と勝手に呼んでいたのだが、本当のところはなんて名前の山なのだろうか。そして、割れ山は本当に割れているのだろうか。

山の名前は、調べるとすぐにわかった。割れ山は、竜神山という名前だった。意外にもかっこいい山の名前だった。名前なんて付いてないかと思ったのに。さらに調べてみると、割れ山は割れているように見えたのではなく、本当に割れていることがわかる。割れ山、つまり竜神山には昭和38年に採石場ができて、それ以降山が削り取られていっているという。その結果、山は真っ二つに分断された。割れ山は、本当に割れ山だった。

山が割れているなんて、すごい光景じゃなかろうか。割れ山の事実を知った筆者は、いっそう割れ山に興味を持った。そして、割れている姿を間近で見てみたいと思うようになる。願わくば、登ってみたいと。

二つに割れた片割れの低い山には、途中まで登山道が整備されていると知る。もう一つの高い山には登る道すらないというから、そちらは断念するとして、低い方の割れ山ならば登れるだろう。

そう思い立って、割れ山に登ることに決めた。

登山日に、実家の母に「竜神山に登ってくる」と告げると「ああ、あの“割れ山”ね」と返ってきた。母に「割れ山」のことを話したことはなかったはずだが。割れ山は、やっぱり割れ山だった。

採石の現場が見おろせた

低い方の割れ山の麓にある、染谷佐志能神社の裏手に周り、山の割れ目を上から眺める。すると、採石の会社の人々が、大型のダンプカーでもって、せっせと小石を運んでいた。その小石は言わずもがな、竜神山の成れの果てである。あと数十年も経つと、この山は割れ山どころか、山ですらなくなっているのだろうか。ネットで見た記事では、竜神山の標高は、採石前と比べて20mくらい低くなっているという。

ある晴れた昼下がり、“小石”を載せたダンプカーは、どこへ向かうのだろうか。

採石の光景を眺めていたら、“かわいい子牛(小石)”に見つめられているような気がして、何だか切ない気持ちになった。
《久米成佳》

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