イラストをVRや3D空間で全方位に動かせる「Live2D Euclid」に迫る…新次元の3D表現 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

イラストをVRや3D空間で全方位に動かせる「Live2D Euclid」に迫る…新次元の3D表現

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【特集】イラストをVRや3D空間で全方位に動かせる 「Live2D Euclid」に迫る ― 2D顔+3D体という”作画”して生み出す、新次元の3D表現
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自分が描いたイラストを自由に動かす――それを一定以上のクオリティで実現しようと思えば、非常に時間がかかるか、多人数で取り組む必要がありました。

ですが技術の進歩や新たな発想により、「自分が生み出したキャラを動かす」という夢はより実現しやすいものになっています。その中でも、1枚のイラストをもとに2Dキャラクターを立体的に動かせる「Live2D Cubism」は、多くの方に衝撃と新たな表現の幅を与えました。


「一枚絵からの究極の表現」を実現するため、今も進化を続けている「Live2D Cubism」。その「Cubism」とは異なる方向性を目指し、上下左右全方位の立体表現を可能とする新たなモデル制作ソリューション「Live2D Euclid」が鋭意開発中です。2016年7月2日に行われた年次イベント「alive 2016」では、「Live2D Euclid」で作られたキャラクター“ユイ”のVRデモ「Live2D 保健室」を出展。新技術の片鱗を味わった体験者たちが驚きの声をSNSなどに寄せ、話題を集めました。

今後のゲーム業界にも一石を投じる新たなツールになるであろう「Live2D Euclid」。今回はその本質に迫るべく、「Euclid」の制作にあたる開発陣にインタビューを行いました。これまで道のりやその魅力、そして来年迎える新たな展開を、こちらでご覧ください。

聞き手・文:臥待弦
企画・編集:栗本浩大(@koudai5511
◆魅力的な嘘を取り込む「Live2D」と、その可能性を広げる「Euclid」

左から阿曽氏、稲田氏
──-まずは自己紹介からお願いします。

阿曽氏:「Live2D Euclid」開発グループリーダーの阿曽直貴です。エディター、SDKの開発全体を率いる立場で、技術的な開発を中心に行なっています。

稲田氏:リードデザイナーを務めている稲田修一です。「Live2D Euclid」を使ってモデルを制作しています。モデルを作るためのエディターがあるんですが、その第一ユーザーという立場から、「こういうものが欲しい」といった要望を出したりもしています。

──「Live2D 保健室」の“ユイ”を作られたのも、稲田さんですか?

稲田氏:そうです。自分が作りました。

──そうでしたか! 彼女のことについても、後々お聞かせください。それではまず、まだ「Live2D Euclid」を良く知らないという方に向け、その概要や特長を改めて教えてください。

阿曽氏:「Live2D」には「描きたいように描き、動かしたいように動かす」という目標があり、それを実現させるツールとプラットフォーム作りを目指しています。そこから生まれた一つの形が「Live2D Cubism」なんですが、その「Cubism」とは違う方向性の表現もあるのではという視点から「Euclid」の開発がスタートしました。

「Euclid」では限定された範囲ではなく、横方向と縦方向、つまり上下左右の全方位に対してイラストの魅力を損なうことなく表現できます。そのため、3D(表現)と組み合わせることが可能となり、「Live2D」の使用用途としても更に幅が広がります。

──イラストの魅力を失わず立体的に動かす。また新たな可能性の扉を開くわけですね。

阿曽氏:3D化されると、元々のキャラクターが持つ魅力が損なわれるというか、「なんかちょっと違うな」と感じることが少なくありません。そのジレンマを解消するツールとも言えますね。「デザイナーさんが描いた通りに表現することができる」というツールになることを目的に開発しています。


──実際に「Euclid」でキャラクターを立体的に表現する際の手順や工程を、大まかに教えていただけますか?

稲田氏:「Live2D Euclid」は、Live2Dと3Dモデルを組み合わせて1体のキャラクターを作ることができます。顔はLive2D(2Dイラスト)で、身体は3Dという組み合わせが一般的です。その顔を作るに当たり、顔の向きが異なる複数枚のイラストを用意します。正面と真横、あと必要であれば斜めなども。それを「Euclid」のエディターで取り込み、絵を動かして顔の角度をつけ、更に表情も加えていきます。身体は3Dのソフトで制作し、そのデータをエディターに取り込んで顔と身体を繋げ、更に顔に関するモーションなども作れば出来上がります。

──「Cubism」は1枚のイラストだけでもキャラクターを動かすことが可能でしたが、「Euclid」の場合は何枚ほど必要になりますか?

稲田氏:キャラクターのデザインや想定する動きの範囲によりますね。枚数を増やすほど、よりイメージに近いものになりますし、より幅広いデザインに対応しやすくなります。もちろん枚数が増えると作業工程も増えておきますが(笑)。

阿曽氏:動かす過程も重視していて、3Dのように「立体を作っていく」のではなく、「絵を描く延長線上でキャラクターが出来上がっていく」ということにこだわっています。3Dが好きな人は3Dツールで作り込んでいけますが、絵が好きな人が3Dツールで作り込むというのは結構な労力だと思うんですよね。だから3Dを作画できるようにしたんです。


──「描く」と「動かす」の距離を縮め、地続きのような関係にするのが「Euclid」が目指す目標のひとつなんですね。

阿曽氏:「Euclid」を開発する最初の発想としては、(「Cubism」で)45度くらいまで動かせるので、その次に別の角度のモデルを付けたし、更に45度をカバーする。こうすると90度動かすことができるので、繰り返すことで全方位可能になるのでは、と考えました。

ただこの方向で想定していくと、原画が26枚必要になるんです(笑)。最初はこのまま作ろうかとも思っていたんですが、表現描写を損なわない範囲でいかに現実的な制作コストに落とし込んでいけるか、その模索と解決を繰り返してきました。

──では、絵と絵をつなぎ合わせる境目を自然に描写する表現力の向上や、当初の必要枚数である26枚をどこまで減らせるのか、そういった点も「Euclid」開発における重要なポイントなんですね。

稲田氏:はい。制作プロセスの改善も、「Euclid」開発の一部になっています。

──ちなみに、キャラの顔をぐるぐる動かすための、最低限の原画枚数はどれくらいでしょうか。

稲田氏:最低限であれば、2枚ですかね。まず正面が必要ですし、その正面からでは見えない部分を補うもう1枚がいるかなと。ただキャラのデザインによっては、背面部分を正面の流用で補う形で、1枚でも可能だと思います。


──2枚やケースによっては1枚で動かせるというのは、かなり驚きです。ちなみに、3Dモデルで作り上げた場合と「Euclid」で制作した場合の、違いやメリットなどはなんでしょうか。

阿曽氏:根本的な違いとしては、イラストの「嘘」や「矛盾」を表現することができます。3Dは正しい計算の上に成り立っているんですが、イラストは「三次元にはあり得ないようなデザイン」を描くことができるんです。

──どの角度から見ても見映えのする「鉄腕アトム」の髪型や、いわゆる「騙し絵」もそのうちの一つですよね。

阿曽氏:現実は、良いことも悪いこともあるわけですが、悪いこともある現実よりも、よりよい虚構を追求したい……というアプローチです(笑)。なので、表現したいものがそもそも3Dとは違っているんですよね。

──単純に比較するのは難しいと思いますが、3Dと「Euclid」の作業時間に差はありますか?

稲田氏:正直なところ、コストという面ではまだメリットになってはいません。出来上がるものが違うので、3Dと比較するのも難しい話なんですけどね。同じくらい苦労した上で異なる表現のものが出来上がるので、ユーザーさんがやりたい表現に合うものを選択してもらえたらなと思います。

──ここまで「Euclid」を開発してきた道のりの中で、最も苦労した点を教えてください。

阿曽氏:イラストの表現を求めているので、正解が分からないんですよね(笑)。3Dが、“正しい計算を積み上げていって表現したいものに辿り着く”とするならば、「Live2D」は“表現したいものが先にあり、それを実現する計算はなんだろう”という逆算が必要になるんです。嘘の表現を成立させるための条件を探す、という感じですね。

──計算式を探す、という模索になるんですか。

阿曽氏:VRを例にすると、3Dの究極系は「現実の再現」になるのだろうと思います。その正解に向かって、3Dは進化していきます。でも「Live2D」は、嘘をついてでもより良い表現を追求します。

──キャラクターをより魅力的に描く嘘を、嘘のまま立体的に表現するわけですね。

◆原動力は「早く2次元の世界に入りたい」

──「alive 2016」にて、「Euclid」のVRデモ「Live2D 保健室」が出展されましたが、その時の反響はいかがでしたか?

阿曽氏:非常に好評でした。その中でも特に、VR空間でのEuclidによるキャラクター表現の可能性を強く感じたという感想が多かったですね。まさにこの「可能性を感じてもらう」というのは、「Euclid」企画した時点からあったコンセプトだったので、そこを充分に伝えることができたのかなと思います。

「Euclidはぐるぐる回せます」といった単なる技術デモではなく、VRという新しい技術の中で表現し、一つの作品、一つの体験として提供できたのは大きかったですね。

稲田氏:あとは「自然に見えた」と言われ、安心しましたね。3D空間の中で、3Dで作られた身体の上に、「Euclid」で制作した顔を置いてあるので、これらが共存するのかという心配がありまして。でも見て頂いた方からの反響がよかったので、この表現の仕方は間違っていなかったんだなと感じました。

──体験した側だけでなく、出展側にとっても手応えのあるイベントだったんですね。ちなみに、「Live2D 保健室」を制作した際、VRと「Euclid」の相性はいかがでしたか?

稲田氏:VRは、3Dの世界に入って、そこにいるキャラと直接会うような体験をするわけじゃないですか。キャラの魅力をユーザーが直に感じられるというデバイスなので、イラストの魅力を損なわず描く「Live2D」制作によるモデルとの相性は良好だと思います。

阿曽氏:究極的には、VRの中でアニメのキャラに会いたいですね(笑)。それを目標にしているので、その第一歩は踏み出せたのかなと。


──当たり前の話なんですけど、その夢のような世界を真っ先に体験できるのは、開発している方々なんですよね。羨ましいです(笑)。

阿曽氏:「Euclid」を開発すること自体とはまた別に、「Euclid」によって描かれる表現の世界を味わえるのも、楽しみなところではありますね(笑)。

稲田氏:VRでじっくり見ると、3Dはどうしても硬さのようなものを感じますが、「Live2D」で描かれたものは、3Dとはまた違う別の「何か」という印象を受けました。

──お話を伺っているだけで、なんだかワクワクしてきます(笑)。そのワクワクを、より多くの方に伝わる日が楽しみです。

稲田氏:開発陣もワクワクしながら作ってます(笑)。

阿曽氏:会社の人間は「Live2D」ファンも多いですしね。

稲田氏:早く2次元の世界に入りたい人たちばかりなので、頑張ります(笑)。


──期待しています(笑)。 ちなみに、VRデモ「Live2D 保健室」に登場し、その魅力と可能性を示した“ユイ”は、今後更なる出番などありますか?

稲田氏:“ユイ”に関しては、「全方位回るように作った1体目のキャラ」として完成しました。一部手を加えて直したりはしますが、大きなバージョンアップなどは予定していません。そして“ユイ”とは異なる、新たなキャラクターを作ろうとしています。

この新キャラは、“ユイ”でやってきたことを活かすと共に、“ユイ”では出来なかった表現を取り込むキャラにするつもりです。“ユイ”は試行錯誤の中でとにかく完成させることを第一にし、ていました。そぎ落とした部分も色々とあったので、そういった部分を盛り込んだキャラになる予定です。

──では、次に「Euclid」関係で大きな発表や展示などをする時に、その新キャラがお披露目される可能性があると考えてよろしいでしょうか?

稲田氏:そうですね、まあ……出ますよね(笑)。

阿曽氏:実は“ユイ”制作の段階では、「Euclid」のエディターがまだ出来上がっていなかったので、「Cubism」の力も借りて制作しました。そして“ユイ”を作る過程で色んな問題も浮き彫りになったので、その問題を改善すべく「Euclid」が更に発展しました。

──その発展により、“ユイ”よりも表現が広がった新キャラが登場すると。どのようなモデルになるのか、楽しみです。

◆2人が夢見る「Euclid」が描く未来

──少し気の早い話ですが、「Live2D Euclid」のリリースに向けた展開や構想などはもう考えてますか?

阿曽氏:単純に「キャラクターが回ります」というようなものではなく、VRデモ「Live2D 保健室」のような体験を提案できればと考えています。なので、近い時期になんらかの作品に出せればと(笑)。

──近い時期に! ということは、「Live2D Euclid」のリリースもそれほど遠くないと思っていいんでしょうか。

阿曽氏:「Live2D Euclid」のリリースは、2017年の第一クォーターを予定しています。更に「Cubism」の3.0も同じくらいの時期になりますね。

──おお、「Cubism」3.0も同時期ですか! では、開発状況も目途が立ちつつあるんですね。

阿曽氏:“ユイ”の段階では出来なかったことを解決するエディター機能も増えましたし、制作に必要な原画の枚数を減らすといった進歩も行われています。

──フリー版のような構想はお考えですか?

阿曽氏:より多くの方に触れて欲しいと思っているんですが、今のところ想定しているのは体験版という形ですね。その他に関しては、まだ検討中です。

──リリースに向けた、現時点の課題はなんでしょうか。

阿曽氏:課題というのを具体的に挙げるのは難しいんですが、「イラストの魅力を十分に引き出していく」というのを常に目指しています。なので、まずは次のモデルでよりよい表現を引き出し、更にその次でその幅を広げ……という繰り返しで発展させていきたいですね。

──リリースされた後は、多くのクリエイターや様々な開発現場から、多彩な作品が登場することと思います。これは個人の感想やお気持ちで構わないのですが、「Euclid」を使うどんな「未来」や「作品」を見てみたいですか?

阿曽氏:まず「Cubism」の話からになりますが、パッケージに描かれているキャラクターがゲームの中に登場すると、パッケージとは違う感じじゃないですか(笑)。それを解消したいという思いは、「Live2D Cubism」の普及で徐々に叶えられてきました。その方向で私がやりたいのは、「コンセプトアートをそのままゲームの中で体験してみたい」ですね。


──「デザイナーさんのイラストを3D化したもの」ではなく、コンセプトアートそのものをゲームの中で楽しめるような未来……ワクワクしますね!

阿曽氏:非常に楽しそうだなと思いますね。個人的に『DARK SOULS』シリーズや『Bloodborne』などが好きなんですが、ああいったダークファンタジーの世界が、最初に発想された方のイメージ通りの形で提供される未来を見てみたいです。

稲田氏:自分も阿曽と同じで、コンセプトアート通りの世界を楽しんでみたいですね。個人的に、『FF』や『ロマンシング サ・ガ』みたいな、剣と魔法のファンタジーな世界が好きなので、イラストで描かれた世界の魅力をそのままゲームの中でも味わいたいです。

ゲームの設定資料を見るのも好きで、特に『FFIX』の多彩なキャラクターと王道ファンタジーの世界観が非常に印象的でした。ボロボロになるくらいまでその資料集を読んで浸っていたので、あの時見たイラストのような世界が描かれたゲームを体験してみたいですね。

──その未来は、多くの方が味わってみたいことと思います。では最後となりますが、「Live2D Euclid」を待ち望む方々や、このツールを活用したゲームなどを楽しみにしているユーザーに向け、メッセージをお願いします。

阿曽氏:「Euclid」でやりたいことは、2Dと3Dの間の表現ではなく、新しい次元の表現なんです。その新たな表現は、色んな作品が生まれていく中で見つかっていくと思うので、クリエイターの皆さん、ユーザーの皆さんと一緒に探していければ嬉しいです。

稲田氏:イラストを描く人がどんどん増えてきていると思うんですが、そういった人たちが「イラストを描いて動かす」まで当たり前にできるようにしたいんです。そんな世界になるように、実現できるツールを生み出していきます。

──創作に新たな選択肢と大きな可能性をもたらす「Live2D Euclid」。その登場と活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました!

◆新モデルの一部をお披露目

インタビューの中で触れられていた、制作中の新たなモデルを一部見せていただけたので、その画像をこちらでご紹介。“ユイ”で出来なかった「アホ毛」の表現にもこだわっているとのこと。


また、イラストとしての情報量がユイよりも大幅に増えているというのもポイントのひとつ。今も進化を重ねている「Live2D Euclid」から生み出される新たなキャラと魅力の片鱗を、こちらからご覧ください。

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《臥待 弦(ふしまち ゆずる)@INSIDE》

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