【THE ATHLETE】大舞台で強さを見せるワウリンカ、錦織圭の状態を見切った冷静な目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】大舞台で強さを見せるワウリンカ、錦織圭の状態を見切った冷静な目

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大舞台で強さを見せるワウリンカ、錦織圭の状態を見切った冷静な目
  • 大舞台で強さを見せるワウリンカ、錦織圭の状態を見切った冷静な目
  • テニス イメージ(c)Getty Images
全米オープンテニスで9月9日、男子シングルス準決勝が行われた。第6シードの錦織圭は第3シードのスタン・ワウリンカと対戦、第1セットを先取したが6-4、5-7、4-6、6-2で敗れ2年ぶりの決勝進出はならなかった。

●グランドスラムを勝ち抜く過酷さ

疲労というのが、この試合を象徴するキーワードだった。アンディ・マレーとフルセットの死闘を演じ、劇的な勝利を収めた準々決勝のあと、錦織は「身体が疲れているので回復に努めたい」と話していた。

グランドスラムの戦いは過酷だ。世界のトップ100に入る選手たちを相手に、1回戦から決勝まで7試合勝ち抜かねば優勝できない。身体はもとより、精神的にも息をつける場所がない。

ワウリンカ戦の錦織は第1セットを良いテニスで先取した。このままのペースでいければ勝機はあったが、大舞台での経験豊かなワウリンカはやるべきことを分かっていた。

「第1セットは錦織に主導権を握られてしまった。もっと彼を走らせようと思った」

ワウリンカの目には素晴らしい立ち上がりを見せた錦織が、会場の蒸し暑さに苦しんでいると映っていた。走らせて消耗させれば勝機が見えてくる。果たしてワウリンカの読みは正しかった。第2セット以降、錦織のアンフォーストエラーの数は増え、1ポイントを短く終えたい錦織は、ネットプレーを頻発する。だがそれは第1セットで見せたような、ワウリンカを苦しめるためのプレー選択ではなく、ラリーでポイントが取れなくなった自分を楽にしたいための選択だった。

ネットプレーという『前に出るプレー』でありながら、果たして錦織の心は前を向いていたのか。


●大舞台で尻上がりに集中力を増したワウリンカ

見せ場は作った錦織だが、15回あったブレークチャンスで決め切れたのは4回。追い込んでからワウリンカに粘られた。特に勝負を分けるポイントとなったのは第3セットの第9ゲーム、錦織が40-30とした状況で長いラリーになる。

錦織は多彩な攻めを見せながらワウリンカをベースラインより数メートル後ろへ下げる。錦織のほうが優位に進めていた。しかし、ミスを恐れず強打を返してくるワウリンカからポイントが奪えない。最後はバックハンドのスライスがアウトになり追いつかれ、ワウリンカにキープされた。

第4セットも錦織は先行するワウリンカからブレークバック。第5セットで追いつくが直後の第6ゲームを落とし、第8ゲームもブレークされて敗れた。


敗退が決まった瞬間ファンからは両者を称える、「錦織、やはりここまでの勝ち上がりがタフだったな」「錦織負けちゃった。完全な体力負け」「錦織が悪かったというより、流れを引き寄せるプレーをしたワウリンカが凄かった」などの声が寄せられた。

●休む間もなくシーズンは続く

全米オープンでの激闘を終えた錦織だが、すぐに新たな戦いが待っている。9月16日からは国別対抗戦デビスカップのワールドグループ(WG)プレーオフが行われる。

今年のデビスカップ1回戦で前年優勝のイギリスに敗れた日本は、大阪の靭(うつぼ)テニスセンターでウクライナを迎え撃つ。敗れれば最上位カテゴリのWGから陥落する一戦。経験豊富な選手をそろえたウクライナに対し、日本は錦織のほか杉田祐一、西岡良仁、ダニエル太郎ら若い選手が代表入りした。

2年ぶりのホームゲームで日本がWG残留を果たせるか注目だ。
《岩藤健》

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