【THE ATHLETE】コナー・マクレガー、電撃引退を撤回…世界が振り回された2日間 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】コナー・マクレガー、電撃引退を撤回…世界が振り回された2日間

オピニオン コラム
コナー・マクレガー 参考画像(2015年12月12日)
  • コナー・マクレガー 参考画像(2015年12月12日)
  • コナー・マクレガー 参考画像(2015年12月12日)
  • ハファエル・ドス・アンジョス  参考画像(2015年7月31日)
  • コナー・マクレガー 参考画像(2016年2月24日)
UFC世界フェザー級王者コナー・マクレガーが4月19日、突如としてツイッターで現役引退を宣言した。トップファイターの急な引退宣言で業界には激震が走った。

問題の発言があったのは日本時間4月20日の未明。マクレガーがツイッターにこんな文章をポストした。

「若いうちに引退することにした。応援ありがとう。それじゃ、また」


この発言には出場が予定されるUFC200へ注目を集めるためのプロモーションか、何らかのジョーク、あるいはツイッターアカウントの乗っ取り被害を疑う声が多かった。

それくらい予想外の引退宣言だったのだ。まだ27歳と若く、7月9日には前回敗れたネイト・ディアスとの再戦が控えている。UFC初のミリオンダラーにもなったばかり。

発言の真偽をめぐって世界中の格闘技メディアやファンが振り回され始める。


コナー・マクレガー

■UFC200の欠場が正式発表

マクレガーの引退宣言があったあと、コーチを務めるジョン・カヴァナは「今まで楽しかったよ」とツイート。引退が事実だと認めるような態度を取った。


さらに『MMAFighting』のアリエル・ヘルワニも、「複数のソースによるとマクレガーのツイートはジョークではない。理由は不明だ」と書き、事態はシリアスだと伝えた。


そしてマクレガーの引退宣言から数時間後、UFCのデイナ・ホワイト社長は「マクレガーのUFC200出場を取り消す」と発表。出場の取りやめについてホワイト社長は、「マクレガーがUFCオフィシャルに対してプロモーションの撮影や記者会見など、いかなる活動にも参加しないと告げた」からと理由を説明した。



その後、米国のスポーツジャーナリストがツイッター上で、「マクレガーの引退宣言はUFCに1000万ドル(約11億円)要求して断られたため。UFC側が要求を呑めば引退を撤回するかもしれない」と発言し注目を集めた。



だがホワイト社長は『FoxSports』のインタビューに応じ、「金銭で揉めてる事実はない。インターネットの悪いところだな」とこれを否定した。

■現役選手からも多くの反応

マクレガー突然の引退宣言はファンやメディアのみならず、現役のファイターたちにとっても寝耳に水だったらしい。問題のツイートが注目を集める中、多くの選手がこの件に言及した。

UFC世界ライト級王者のハファエル・ドス・アンジョスは、これまでマクレガーが取ってきた言動と引退宣言との不一致を指摘し、「逆境に立ち向かうと言っておいて引退するのか。誰か俺に説明してくれ」と訝しんだ。


ハファエル・ドス・アンジョス 参考画像


コルビー・コビントンは引退宣言を本気にしておらず、注目を集めようとするジョークの類いだと冷ややかに見ている。こうしたことはフロイド・メイウェザー流の交渉術だと彼は言う。



マット・ブラウンも「釣りだろ。メイウェザーは何回引退したっけ?」と、ボクシング界のダークヒーローとして巨万の富を築いた元王者を引き合いに、この引退宣言はすぐ撤回されると予想した。


だがやはり何と言ってもMVPはネイトだろう。UFC200でマクレガーとの再戦が予定されていた彼は、「俺の仕事は終わったみたいだし、俺も引退するかな」とウィットに飛んだ答えを返している。


■引退撤回とUFCへの不満を吐露

世界中を振り回してきたマクレガーは引退宣言から2日後の21日、フェイスブックを更新した。そこで引退宣言の正式な撤回とプロモーションの欠席、UFC200欠場に至った理由を語っている。主には試合前のプロモーション活動をめぐるUFCへの不満だ。



「俺は自分の仕事をして戦おうとしている。ファイトマネーはもらっているが、プロモーションの分はもらっていない。俺はプロモーションのゲームに夢中になりすぎて、戦う術を忘れていた。フライヤーを配るのはやめて店に戻るときだ。

50回のワールドツアー、200の記者会見、100万のインタビュー、200万の写真撮影。試合に向けて間違った準備をしているとの思いが募ってきた。モーニングショーで話したりするのは俺の本来の人生じゃない。

俺はリベンジしようとしているんだ。ポルトガルとアイスランドへチームとともに渡り、身体を作って心肺機能も強化しようとしている。前回の戦いから反省点を踏まえて修正しなければならない。また宣伝活動に精を出すことはない。

俺はすべてのメディア出演を拒否したわけじゃない。調整期間がほしいと言っただけなんだ。しかし、それは聞き入れられなかった。

連中は、『このプロモーションには1000万ドルかかってるんだぞ』と俺に言ったよ。だから俺は善意から1000万ドルを節約させた上、それを3倍にして返してやることにしたんだ。1回のツイートでな。その1000万ドルは別のことに使えば良い。俺のショーは良かったろ。

俺は今、自分自身を隔離する必要がある。自分より背が高く、手足が長くて重い相手と戦おうとしてるんだからな。正しい準備が必要なんだ。踊ってる場合じゃない。ほかの猿どもを踊らせとけ。俺はずっとやってきたんだ。

ネイトの馬鹿はステージ映えしそうだ。カメラの前に立たせておけ。やつは前回、ふざけた活動をしなかったんだからな。俺はハファエル・ドス・アンジョスが欠場する前に、記者会見もインタビューも済ませていた。

再び自分のトレーニングに集中する。俺は最近8ヶ月間でこの会社に4億ドル(約437億円)をもたらしたと思っている。ちょっとくらい余裕が与えられても良いはずだ。

俺はまだUFC200出場に向け準備を進めている。予定されていた会見のうち、ニューヨークにだけ出席してトレーニングへ戻るというのはどうだろう。気が散るのはなしだ。これじゃ不満か。だったら俺から言えることは何もない。

俺は記録のため、USADAのため、UFCとの契約のためにも引退するつもりはない」


『I AM NOT RETIRED』で締められたマクレガーの声明には多くの反応が集まっている。UFCの傀儡にならず自分の意思を貫いてほしいと応援する声がある一方、「身勝手すぎる」「(引退撤回は)分かっていた」「マクレガーとホワイトによる茶番劇」と冷ややかな反応も多い。

■陣営はファンの後押しを要求

マクレガーはUFC200出場の意思を示したが、現時点でホワイト社長は例外を認めない方針。プロモーション活動を欠席するなら出場させないとの立場を変えていない。

コーチのカヴァナはツイッターで世界中のファンにサポートを求め、大衆の声でUFCを動かそうとしている。同様の働きかけはマクレガー本人も見せた。



ひとりの男、ひとつのツイートに振り回された2日間を経て、事態はどこへ向かって収束していくのか。UFC200のメインカードが決定するまで、まだ一波乱くるかもしれない。
《岩藤健》

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