【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランス全日程をMTBで追いかける…イラストレーター小河原政男さん | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランス全日程をMTBで追いかける…イラストレーター小河原政男さん

オピニオン コラム
ツール・ド・フランス全日程をMTBで追いかける日本人イラストレーターの小河原政男さん
  • ツール・ド・フランス全日程をMTBで追いかける日本人イラストレーターの小河原政男さん
  • ツール・ド・フランスの沿道でおなじみの悪魔おじさんとは親友
  • フランスは広大な牧草地が随所にあり、キャンプ場でなくても寝られる
  • フランスの大自然を堪能できる自転車旅は、イラストレーターとしての創作意欲をいやが上にもかき立てる
  • キャンプ場にいる小河原さんを訪ねてみると…。お昼寝の最中だった
  • 新城幸也に水彩画をプレゼント
  • 小河原さんのアトリエ
ツール・ド・フランスの全日程をMTBで追いかける日本人イラストレーターがいる。自転車専門誌でも筆をふるう小河原政男さんだ。キャンプ道具を満載した自転車でアルプスやピレネーの峠にも登る。1994年から始めた「追っかけ」の旅は2016年で23年目になる。

■毎年7月は連絡が取れない

東京・代々木にアトリエを構える小河原さんは、毎年7月になると連絡が取れないことで知られる。水彩画からデジタル技術を駆使したパソコンデザインまで巧みに操る逸材だけに仕事の依頼は殺到しているのだが、7月はすべての仕事をシャットアウトしてツール・ド・フランスの現場に飛び立ってしまうのだ。Wi-Fi接続したスマートフォンで動向が確認できるようになったのは最近になってから。


フランスの大自然を堪能できる自転車旅

MTBにキャリアを搭載し、それにモンベルのキャンプ道具をくくりつけてツール・ド・フランスのコースを先行。ゴキゲンな観戦ポイントを見つけて選手らの到着を待つ。そんなスタイルをすでに22年も続けている。現在の愛車は二代目のインターマックス。旧知の仲の今中大介氏に依頼して、特注のMTBを作ってもらったという。

17歳のときに坂本龍馬にあこがれて、千葉から高知までの600kmの野宿サイクリングを敢行。1994年に自転車専門誌『サイクルスポーツ』でツール・ド・フランスの存在を知り、21歳のときからMTBにキャンプ道具を積載して現地に足を運ぶようになった。それからはフランスの美しい景色や現地観戦の楽しさに魅了され、毎年欠かさず「追っかけ旅」と称してフランスに遠征している。

■キャンプ場では再会を楽しむ

寝るところはホテルではなく野営のほうが気兼ねなくていいという。キャンプ場だったり、そのへんの草原だったり。朝になるとキャンプ場近くのカフェに。ゴキゲンなクロワッサンとコーヒーで朝食を済ませ、地階にあるトイレを借りてヒゲを剃るのもお手のものだ。

基本的にツール・ド・フランスのコースをなぞって自転車で移動する。そうはいっても平均時速40kmで集団走行するプロレーサーにかなうわけはなく、鉄道網が平行して走っているときは電車で移動し、一気に距離を稼ぐ。「個人タイムトライアルがあるとホッとします。移動距離が短いですからね」と小河原さん。

沿道ではすっかり人気者だ。テレビでもおなじみのディアブロ(悪魔おじさん)とは腐れ縁で、彼のクルマに乗せてもらって長距離移動することもある。

そんな小河原さんの行動パターンは日本の雑誌でも紹介されているので、同じように自転車で追っかけをする人も増えた。近年は若手サイクリストを引き連れて走っている姿を目撃するほどだ。常宿とするキャンプ場はフランスのあちこちにあって、いつもその時期に泊まり合わせるキャンパーや管理人とは顔見知り。「オー、マサオ。今年も来たのか」と再会を喜び合う。


ツール・ド・フランスの沿道でおなじみの悪魔おじさんとは親友

そんなツール・ド・フランス観戦の達人なのだが、唯一の難点はフランス語がまったく話せないこと。

「なんの問題もないですよ。同じ自転車好きじゃないですか。なんとなく思っていることが伝わるんです。それがツール・ド・フランスの魅力なんです」

1996年に今中大介が出場したときも衝撃だったというが、新城幸也や別府史之の活躍に新たなツール・ド・フランスの到来を感じたという。

「今中さんが山岳で遅れたときは、日本の国旗を振っていたボクを周囲のみんながなぐさめてくれた。新城くんや別府くんの活躍が夢のように感じることもある。ツール・ド・フランスはサイクリストの夢舞台。そこで一喜一憂できるなんて、自転車好きにとってこれ以上のことはないですね」
《山口和幸》

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