「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー…新キャラ・吉本はロードレースの真実を伝える人物 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー…新キャラ・吉本はロードレースの真実を伝える人物

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「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー 新キャラ・吉本進はロードレースの真実を伝える人物
  • 「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー 新キャラ・吉本進はロードレースの真実を伝える人物
  • (C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/劇場版弱虫ペダル製作委員会
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8月28日にいよいよ公開を迎える『劇場版 弱虫ペダル』。本作は、人気アニメ『弱虫ペダル』の最新作であり、初となるオリジナル長篇作だ。
テレビアニメでは総北高校、箱根学園(ハコガク)をはじめとする各校の自転車競技部メンバーが、夏のインターハイで激突。手に汗を握るレース展開で、多くのファンを魅了した。
そして今回の映画の舞台となるのは、火の国と称される熊本だ。インターハイを終え、夏も終わりに近づく中、「熊本 火の国やまなみレース」への出場を決意する総北高校の小野田坂道たち。おなじみのキャラクターに加え、ホスト校である熊本台一には新キャラクター・吉本進も登場。テレビアニメ版とはまた一味違った、熱いレースが展開される。

また、本作で話題を集めているのが、原作者・渡辺航氏が本作のためにシナリオを書き下ろしている点だ。原作者自らが筆を執って描かれたとあって、アニメはもちろん、原作ファンにとっても見逃せない。
そんな渡辺氏に今回、お話を伺った。熊本という舞台、そして吉本進にかける思いから、シナリオの作り方など、さまざまな話題が語られた。

『劇場版 弱虫ペダル』
http://yowapeda-movie.com/

――映画の舞台は熊本の阿蘇ですが、こちらを選んだ理由は何かあるのですか?

渡辺航氏(以下、渡辺)
僕の地元は長崎県なので、帰省するとき必ず熊本を通るんです。そのおかげで、現地に雄大な景色があることも知っていました。ここを舞台にロードレースを描けたらとずっと思っていました。また劇場版ということで、これまでとは違う遠い場所を描きたい気持ちもありました。その点でも九州は非常にロケーションがよく、相性が良いと考えました。
『弱虫ペダル』の作中には、すでに熊本台一という高校が出ているんです。ホスト校として熊本台一を据えられるため、違和感なく物語を動かせることも理由のひとつです。


――映画ではお馴染みのキャラクターも多く登場します。

渡辺
ファンの皆さんは、やはり総北や箱根学園、京都伏見や広島呉南といった高校同士の戦いが見たいと思うんです。

――ちなみに、戦いの舞台となる熊本のコースは実際に行かれたことがあるのですか?

渡辺
もちろんありますし、走ったこともありますよ。映画本編の中で、「ゴール地点はここがいいんじゃないか」とか、「おすすめのロケーションはここです」といった提案はさせていただきました。
ロードレースはコースの中に、その土地の名所や、栄えるロケーションを組み込むことが多いです。映画の大きなスクリーンで描くとあって、そこは妥協したくはなかったですね。

――熊本のコースを走ってみて、おすすめのポイントというとどこになるのでしょうか?

渡辺
「ここの登りは絶対面白いだろうな」とかは考えながら走っていましたね。ただ、今回の映画で設定しているコースが、熊本側から登っているんです。ですが実際私が走ったのは逆で、熊本へ向けて下っていんです。私自身「これを登るとなったら大変だろうな」と思いながら下っていたので、その苛酷さは注目してもらいたいですね。


――渡辺さんは本作のストーリーを手掛けられましたが、原案は以前からあったものなのですか?それとも、映画化の話が来てから考えたのでしょうか?

渡辺
それは後者です。私が現在連載している漫画の流れは壊したくなかったのですが、そうなると、総北や箱根学園といった面々が集まれる隙間が、インターハイが終わった後の秋口という1箇所しかなかったんです。他校も含めてインターハイに出たメンバーが走ることを期待している方が多いと思いますし、そこを外すわけにはいかないと思っていました。

――普段の漫画とアニメで、物語を作ることに違いはありましたか?

渡辺
漫画の場合はネーム(漫画を描く際、コマ割りやセリフを大まかに書き込んだもの)を作りながら考えていくタイプなんです。

――材料というと、具体的にどのような内容になってくるのでしょうか。

渡辺
『弱虫ペダル』はキャラクター同士の会話劇が重要な作品です。なので、キャラクターとキャラクターがどういう状況でどんな会話をするかをとにかく考えました。レース中だけでなく回想シーンもすべて考えました。それを監督はじめスタッフの皆さんが繋ぎ合わせていく、その後、細かい順番の入れ替えであったり、ニュアンスの修正もしています。

個人的にはかなり膨大な量の会話を作ったと思っていて、すべて入るか不安だったのですが、あとで話を聞いてみたら「ちょうどよかったです」と言われたんです。TVに比べて映画の尺になると本当に多くの情報量が入るので驚きましたね。



――お話を聞いていると、普段とはかなり違う作り方になっていたのですね。

渡辺
ネーム式のやり方と違うとはいえ、物語の軸にあるのはやはりレースです。会話の内容と会話をするシチュエーション、そしてどのチームが勝つかをはっきりしておけば、スタッフの皆さんが面白いものを作ってくれると確信していました。

――反面、絵に描いてしっかり伝えようという気持ちはなかったのですか?

渡辺
それ をやってしまうと僕としてもスケジュールが厳しくなるので、考えませんでしたね。加えて、しっかり伝えてしまうとアニメの作り方に制限を付けてしまうと思いましたし、なにより僕自身が踏み込みすぎるのもよくないと思っていましたから。

――では、そうやって作られたシナリオの中でも注目してもらいたいポイントはありますか?

渡辺
やはり熊本台一の新キャラ、吉本進ですね。怪我でインターハイは出られなかったバックグラウンドの中でいよいよ登場する実力者であり、ホスト校としての意地も見せてくれます。あとはシンプルに、坂道君の頑張りも見てほしいですね。


――その吉本進ですが、どういった発想で生まれてきたのでしょうか?

渡辺
熊本台一はネタキャラが多いポジションなんですよね(笑)。とはいっても、彼らの中には目標があり、歴史があり、そして積んできた練習があると思います。それを描くためのキャラクターですね。

実際のロードレースでは、怪我や病気でレースに出られない選手は数多くいます。しかし漫画やアニメの場合は、やはり全員がフルコンディションでなければ面白くありません。それでも、怪我を持つキャラクターがいてもリアリティがあっていいとはずっと思っていたのです。そう考えていたときに映画の話が来て、怪我をした過去を持つ人物を入れてみようとなりました。ロードレースの真実を伝える人物と言ってもいいかもしれません。

――怪我持ちというバッググラウンドは今回が初めてですが、これまでのキャラクターでも、ロードレースの真実を入れ込むことはあったのですか?

渡辺
もちろん考えて作ることもあります。例えば原作の15巻で新開隼人が出てきますが、それまでレース中に補給食を食べる場面は描いていませんでしたが、実際は食べながらレースに臨む人は多いのです。なので新開には、ロードレースの中で食べる表現をしてもらう人という位置づけになってもらいました。

あとは金城も、ロードレースでサングラスを掛けることを表現したキャラクターです。実際はかなりの人数がサングラスを掛けてレースをしますが、漫画で全員がサングラスを掛けてしまったら個性が出せないじゃないですか。だからサングラスという表現は、金城に特化させたのです。


――吉本進の話題に戻りますが、彼はどのような形でストーリーに入ってくるのですか?

渡辺
別冊チャンピオンの『弱虫ペダル SPARE BIKE』でも少し描いていますが、熊本台一は吉本と田浦の2人で育ててきたチームなんです。2人はいつもインターハイでリザルトゼッケンの獲得、さらには優勝を目標に頑張っていたのですが、吉本の怪我で夢は絶たれてしまいます。今回のレースはインターハイ後のレースであり、2人にとっても最後のレースになります。最後だけに、期するものを持って臨む2人の姿が描かれるのです。

――では、『弱虫ペダル SPARE BIKE』を読んでいればさらに楽しめそうですね。

渡辺
そうですね。熊本編だけでも読んでおいたほうがいいんですけど…まだコミックスになっていないんですよね(笑)。将来的には、熊本だけでなく、さまざまなキャラクターのスピンオフを描いていきたいと思っています。

――『弱虫ペダル』は近年女性ファンも非常に増えた印象がありますが、連載開始当初から女性層は意識していたのですか?

渡辺
いや、あくまでも少年漫画雑誌ですし、『弱虫ペダル』も若い男性に向けて描いているつもりです。でも、ファン層の広がりは肌で感じています。女性ファンの方はスピード感がありますよね。
しかしアンケート調査によると、コミックスの購入層は男女で50%ずつだそうです。女性の目に見えるアクションの活発さが目立つということなんでしょうね。
漫画の作り方としては、女の子のキャラクターをもっと出す方法もあったと思います。しかしそれをやると、レースに出場している男子たちが、女の子のために頑張っている描写になってしまう危険性もあります。彼らはやはり、同じチームのメンバーのために走っているんです。

――最近は漫画本編やスピンオフさらにはアニメと、かなりご多忙そうですよね。

渡辺
ツール・ド・フランスの中継にも出演させてもらいましたしね(笑)。ですが、今は疲労感というより、映画がどうなるかという期待感でいっぱいです。

――なるほど。本日はありがとうございました!

「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー 新キャラ・吉本進はロードレースの真実を伝える人物

《ユマ@アニメ!アニメ!》

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