【THE ATHLETE】パ・リーグの首位打者争いが熱い…同年代のライバル秋山と柳田 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】パ・リーグの首位打者争いが熱い…同年代のライバル秋山と柳田

オピニオン コラム
野球 イメージ(c)Getty Images
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2015年のプロ野球も折り返し地点を迎えた。この時期になると気になってくるのが個人タイトル争い。もちろん長いシーズン、半分残っているためここから先まだ何が起こるか分からないものの、候補者はある程度絞られる。

今年のプロ野球を盛り上げているライバル関係といえば、真っ先に思い浮かぶのは西武ライオンズの秋山翔吾とソフトバンクホークスの柳田悠岐だ。激しいパ・リーグ首位打者争いを繰り広げファンの目を釘付けにしている。

■シーズン最高打率の更新も狙える

7月3日の試合が終わった時点で秋山の打率は.383、対する柳田も.381の高打率で追いかける。3位の清田育宏が.340だから、いかにふたりが傑出しているか分かるだろう。

NPBの歴代シーズン最高打率は、1986年にランディ・バースが残した.389だ。続いてイチローの.387(2000年)と.385(1994年)が続く。秋山と柳田には今年、この記録を抜く期待もかかっている。

6月29日からの3連戦で直接対決した両者は、秋山が2安打すれば柳田も同じだけ打ち返し、柳田がホームランを打てば秋山も得点につながるヒットでお返しするなど熾烈な争いを繰り広げた。

互いに相手の調子を考えれば2安打でも気が抜けない。柳田が5打数3安打の猛打賞を記録した6月20日、同じ日に秋山は5打数4安打で首位打者を守っている。普通このレベルになると誰もついてこられず、記録だけを相手にする孤独な闘いを強いられるものだが、同い年のライバルがいることでふたりとも高い集中力を保っている。

■選手としてのタイプは違うふたり

秋山と柳田は同じ1988年生まれ。2010年のドラフトで柳田はソフトバンクから2位指名、秋山は西武から3位指名を受けて入団した。このふたり、実はドラフトのときから縁がある。

もともとソフトバンクの2位指名は秋山で固まっていた。だが直前に王貞治会長が「候補の中で一番飛ばすのは誰だ」と質問。スカウト陣が「柳田です」と即答したため、指名を切り替えたエピソードがある。

この逸話からも分かるとおり柳田は長打力が魅力の選手でもある。高い身体能力から、日本人離れした打球を飛ばす。6月3日のDeNAベイスターズ戦で、三浦大輔からスコアボード上段まで飛ばす特大弾を放ったのも記憶に新しい。1年目から素質を高く買った王会長により「柳田にはフルスイングしかさせるな」と厳命され、当てにいくバッティングをするとコーチが注意したという。

2014年に侍ジャパンとして対戦したMLB選抜も、その攻撃的なフルスイングに驚いた。従来の日本人的1番打者といえば、バットに当てるのは巧いが長打力はなくノーパワーのイメージ。柳田は彼らの概念を覆す存在だった。


対する秋山は、おそらく大勢がイメージする好打者、いかにも首位打者争いを繰り広げるタイプのバッターだ。右へ左へ広角に打ち分け足が速く守備も良い。走攻守三拍子そろった選手。

だが2014年までバッティングではそれほど目立つ存在でなく、守備や走塁が評価されていた。今年ついに覚醒したきっかけを秋山は以前、「子供が産まれたことと、バッティングフォームを変えたこと」と話していた。

真面目で考え込む性格の秋山は、2014年まで打てない日が続くと思い悩み、それがプレーにも現れさらに打てなくなる悪循環にはまっていた。良いときは良いが、悪いときはとことん沈み込む。だが泣いたり笑ったり、表情がコロコロ変わる子供を見ているうち、ヒットが出なくても前の打席を引きずらないで切り替えることを学んだという。

また昨年まではバットを上から下に振り下ろすダウンスイングだったのを改めた。グリップ位置を下げ、より点ではなく線でボールをとらえる打法にした。右ヒジの遊離軟骨除去手術で野球から離れていたオフに、思い切った改造を施した成果が現れている。

■首位打者争い以外でも注目のふたり

僅差で首位打者を争っている場合、トップに立った選手は成績の維持と相手の打率が下がるのを期待して、終盤の数試合を欠場することがある。ファンの不満を募らせる行為だが、今年のふたりにその心配はなさそうだ。

なぜなら秋山には、2010年にマット・マートンが残したシーズン最多安打記録(214安打)の更新、柳田にも2002年の松井稼頭央を最後に達成者がいない3割30本30盗塁のトリプル・スリー達成が期待されているからだ。

秋山は今のペースなら年間230安打に迫る。どこまで記録を伸ばせるか最終戦まで目が離せない。

3番打者としてクリーンナップの一角を担う柳多は、昨年の同時期に比べ盗塁数の減少が気がかり。現在14盗塁だが後半戦さらに増やすことができるか。
《岩藤健》

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