【小さな山旅】助川山のゴンドラがまとう不思議な感覚…助川山~高鈴山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】助川山のゴンドラがまとう不思議な感覚…助川山~高鈴山(2)

オピニオン コラム
助川山の頂上。東屋で海を見ながらランチが楽しめる。けっこう贅沢な時間が過ごせる。
  • 助川山の頂上。東屋で海を見ながらランチが楽しめる。けっこう贅沢な時間が過ごせる。
  • 宙に吊るされたまま動かないゴンドラ。この日は動いていなかったが、普段は活動しているらしい。
  • このゴンドラは、助川山の至るところから見ることができる。
  • 索道落下防止のトンネル。ちょっと山に相応しくない構造物が、不思議な感覚に陥らせる原因だろう。
  • 頂上付近の道。海を見ながら歩くのは最高に気持ちがよい。
  • 頂上からの眺め1。日立市民運動公園球場が見える。
  • 頂上からの眺め2。シビックセンターの球体と日立製作所の工場が見える。
  • 頂上からの眺め3。鹿島灘が見える。
助川山の頂上に立ち、そこから見える風景を眺めると、胸がすく思いがした。

頂上からは、広くて大きな太平洋と日立市の街並がまるまると見渡せた。フジテレビ本社ビルを彷彿させるシビックセンターの球体。日立市民運動公園球場に、日立製作所の工場群。遠くには鹿島灘のなだらなか曲線が霞んで見えた。ふと、後ろを振り返ると、頂上に白い巨塔がそびえ立つ、高鈴山の優雅な姿が目に映った。

助川山は、助川山市民の森という名の公園として、自然遊歩道(ネイチャートレイル)が整備されている。1991年3月7日に起きた山林火災の跡を利用して作られたらしい。その整備の具合がちょうどよく、自然の姿を残しつつ散策しやすいようになっている。今回は、この助川市民の森を抜けて、高鈴山の山頂を目指して歩いた。

散策路を歩いていて終始視界に入るのが、空中に吊るされたゴンドラである。このゴンドラは、石灰石を運搬するのに使われているようで、今でも現役らしい。(この日は動いてなかったが)古錆びた鉄カゴが、宙に吊るされたまま動かないでいるのを見ていると、何故だか切ない気分になってくる。

地球はまわる~♪ 

ゴンドラを見ていたら、安田成美が歌うラピュタのテーマソングが脳内をかけめぐった。

君を乗せて~♪

なんだろう、この感覚は? ゴンドラだけでなく、助川山全体に漂うこの不思議な感覚。

悲壮感?
いや、確かに日曜だというのに人はまばらであったが、そこまで悲しいというほどではない。

爽快感?
いや、確かにほどよく整備された自然の中を歩くのは気持ちが良いものだが、そこまでスッキリとした感覚ではない。

では、郷愁感?
いや、確かに歩いていて懐かしい日本の自然の風景を見ている感覚に陥りはするが、それとも違う。

トトロ感?
近い感覚である。でも、もっと切ない感じが…。

ラピュタ感?
そうだ、これはラピュタ感という言葉がしっくりくる。

宙に浮いたまま止まっているゴンドラや、赤く錆びた索道落下防止のトンネル、そのとなりに立つ鉄塔。そして、まばらな人影。

ゴンドラもトンネルも、公園自体も、まだまだ現役で活躍しているのだが、何故だか人のいる気配がしない。それらが、過去に大勢の人で賑わっていたが今はもう使われていない廃墟のような、もしくは天空の城にでもやってきたかのよう感覚に陥らせた。ゆえに、ラピュタのテーマソング「君をのせて」が脳内に流れ出したに違いない。

少し歩くたびに、宙に吊るされたゴンドラを眺め、ラピュタ感に浸る。助川山の頂上にたどり着いた頃には、筆者の胸の内はラピュタ感にどっぷりと浸りきってしまい、どうにも切なさが拭い切れない状態であった。

だが、頂上からの景色を見た瞬間、筆者の中を包み込んでいた霧のようなラピュタ感が、すーっと晴れていくのがわかった。
《久米成佳》

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