【Next Stars】世界でただ1人のプロプレイヤー、スタッキング瀬尾剛選手 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Next Stars】世界でただ1人のプロプレイヤー、スタッキング瀬尾剛選手

オピニオン ボイス
世界でただ1人のプロプレイヤーに迫る!スタッキング瀬尾剛選手
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世界でただ1人のスポーツスタッキングのプロプレイヤー、瀬尾剛(せお・つよし)さん。競技と自身の可能性に賭け、この道一本で勝負を続ける。


■スポーツスタッキングとは?(スポーツスタックスジャパン公式HPより)

“スポーツスタッキングとは、12個のカップをさまざまな組み合わせに積んだり崩したりするテクニックとスピードを競うエキサイティングなスポーツです。“



■1000分の1秒を争う「アスリート」の戦い

---:どういった形でこのスポーツに出会ったのですか?

瀬尾剛選手(以下、敬称略):今から10年前ほど前、ジャグリングをやっていたときにこの競技に出会いました。ジャグリングのお店に行ったとき、ブースにスポーツスタッキングの体験コーナーがあったのです。そこで触ってみて、はまったのがきっかけですね。

---:体験してみたら自身の才能が感じられた、ということなのでしょうか。

瀬尾:いや、才能を感じたというよりも、体験した短時間の間にも自分のタイムがどんどん短くなっていくのがすごく楽しくて、「もっと速くなりたいな、タイムを縮めたいな」という純粋な気持ちでカップを触っていました。

---:およそで結構です。スピードはどれくらい向上するものなのでしょうか。

瀬尾:そうですね、種目がいくつかあるのですが、一番難しい種目で、1分くらいかかっていたものが、いまだと10秒切って7、8秒位に縮まりましたね。

---:ジャグリングも並行して活動されているということですが。

瀬尾:はい、今はこのスポーツスタッキングというスポーツを広めるために、ジャグリングと一緒に「パフォーマンス」という形で仕事とし、各地を回っています。

---:ジャグリングとスタッキングの共通点は。

瀬尾:両手の指の先まで器用に細かく使わなくてはならないというところですね。2つとも一緒に並行して行っていたから相互の技術を上げることができてきたのかな、と思っています。

特にスポーツスタッキングだと、片手で複数カップを取る場面があるのですが、それは指先のちょっとした力とか位置とかで大きく変わってくるので…。指先の感覚は本当に大事です。

---:指の感覚を鍛えるには、どのような訓練を行っているのですか。

瀬尾:これはもうひたすらカップを触って、繰り返し繰り返し同じことを練習して身体に染み込ませていく感じです。

---:瀬尾さんの感じるスポーツスタッキングの魅力は。

瀬尾:アメリカなどの一部では体育の授業やレクリエーションの授業でとりあげられています。指先の細かな感覚を磨きながら楽しくチャレンジできるという点で、反射神経とか、集中力がアップするというのが研究結果でも出ているそうです。ただ楽しいだけではなく、身体にもプラスの影響があるのはとても魅力的だと思いますね。

時々私も仕事で高齢者の方にも教える機会があるのですけれども、基本的に簡単ですし、皆さんとても楽しんでチャレンジしてくださるので、そこも魅力を感じられるところだと思います。




---:競技人口など、お分かりになる範囲で教えて下さい。

瀬尾:「具体的に何人」という形では分からないのですけれども、アメリカだと1万校以上の学校がスポーツスタッキングを授業の一環として取り上げられていたり、アジア諸国でも教育現場に入っていったりしているので、競技人口はどんどん増え続けています。

また、毎年ギネスの企画で、「決められた時間にどれだけの人がスポーツスタッキングをするか」という題で行なわれている企画があるのですが、参加人数がどんどん増えつづけていて、今年はなんと60万人が参加しました。自分がこの競技をはじめたときは4万人~5万人という規模だったのですけれど、そこから考えると本当に今は増えているんですね。

ただ、日本では普及が全然進んでいないので、そこはやはりなんとかしていかないと…、と思っています。

---:スポーツというよりも教育的な意味合いが強いのでしょうか。

瀬尾:教育の面では確かに幅広く色々なところで使われているので、そうした捉え方もありますね。ただ、大会の様子などを生で見ていただけると分かると思うのですが、1000分の1秒を争う、「アスリート」の戦いである要素ももちろんあります。




■日本で、どう普及させていくか

---:スポーツスタッキングの大会では世界一を獲得する実力です。

瀬尾:マスターズという部門がありまして、25歳以上が参加可能な大人の部門ですが、その大会に以前出場した時に結果を残すことができました。

---:世界のライバルたちの実力はいかがですか。

瀬尾:2014年世界大会では、種目が3つあり、その合計タイムで個人総合記録という形で競います。2位との差は0,2秒とか、紙一重の戦いでした。陸上の100メートル走よりも、シビアなレベルの数字が求められます。

私は2014年の日本大会、アジア大会、世界大会でそれぞれ運よく優勝することができましたが、たまたまです。(笑)本当にぎりぎりの戦いだったので…。

---:3つ種目にはそれぞれどういった特徴があるのでしょう。

瀬尾:積み上げて崩す、という形式は変わらないのですが、形が3パターンあるという感じです。1番短いものだと本当に早く、2秒台で終わります。1番長いもので8秒程度です。

---:大会には毎年出場しているのですか。

瀬尾:2006年から日本大会は始まったのですが、1回目、2回目、3回目と優勝することができました。で、2009年からは大学に入学したということもあり色々と忙しく、2014年はそういった大会への出場は5年ぶりでした。

---:マスターズと仰られていましたが、他のクラスはどう分かれているのでしょうか。

瀬尾:マスターズは25歳~59歳で、他のクラスも沢山分かれています。6歳からの部門などもありまして、小学生の部門が一番盛んです。

---:子供達の方が速かったりするのですか。

瀬尾:そうですね、今1番速い記録は11~13歳くらいだと言われています。実は日本にも私よりも速い選手は小学~高校生くらいの間で数名いまして、世界対抗の団体戦は彼らと組んでいます。

---:団体戦の結果はいかがでしょうか。

瀬尾:アジアでは4位、世界大会では予選落ちでした。2014年に、5年ぶりの世界大会出場で、「世界がいかに早くなっているか」ということを実感しましたね…。5年前は少しも目立っていなかった国が、とんでもなく速い選手を集めてきてきたりしていたので、各国では競技全体が盛んになっているんだろうな、という印象を受けました。

---:日本では相対的に普及が遅れている、ということでしょうか。

瀬尾:そうですね。「止まっている」という感じです。私のように普及活動をしている人間がほとんどいないので。だからこそ、私がきっかけになって少しでもスポーツスタッキングという競技を広めることをしなければ、と思っています。

---:競技の認知度が低いとさまざまな苦労があると思います。

瀬尾:そうですね、例えばパフォーマンスの仕事や、スポーツスタッキングを教えにいく活動などをしている時に、自分も資金面にゆとりがあれば、パフォーマンスをした地域、教えた人たちに、それぞれスポーツスタッキングの道具をプレゼントしたりとか、できるのですけれども、それができないというのは少し厳しいところですね。

道具自体は、そこまで高額なものではありません。カップだけですと1セット2000円くらいです。時間を測るマットとタイマー付きのセットだと、6000円くらいになります。

---:大会は年に何回で、世界大会の出場資格などはどのように決まっているのですか。

瀬尾:日本大会も世界大会も年に1回です。

それぞれの国にスポーツスタッキングの協会があり、協会が認めた選手だけが出場できるという形になっています。その為には日本大会で高順位をだすことも大事ですね。

また、この競技には団体戦があり、リレー形式で時間を測るという競技で、4人で行います。だから、毎年日本大会の上位4名が、「チームJAPAN」として世界大会に参加する、という形になっています。




■世界でただ1人のプロとしての生き方

---:瀬尾選手の普段の生活パターンを教えてください。

瀬尾:土日にはパフォーマンスの仕事があります。平日は練習と、普段教育講座があったり、児童館や小学校に出かけてスポーツスタッキングを教えたりする活動も行なっていたりします。

---:アルバイトなどもしているのですか。

瀬尾:バイトはしていないですね。海外では協会などの機関に勤めている方はいらっしゃるんですけれども、スポーツスタッキングを通して、プレーヤーとしての立場で生計を立てていこうと人間はいまのところ世界でも私しかいない状況です。最初は苦労しましたけれども幸い少しずつ軌道に乗ってきたので、なんとかやりくりできている感じです。

スポーツクラブのインストラクターとして一時期就職していた時期もあったのですが、就職してもスポーツスタッキングを続けられるかな…。と思って就いた職であったのに、まずこの競技をみんな知らないので社内から広げなくてはいけないし、競技について動きたくてもいつ動くかもわからない。そもそも動けないかもしれない。他のやらなくてはならない仕事も沢山ある。そういった要素があり、自分も若く挑戦できる時期だな、と思ったので、半年で会社を辞めさせていただいて、この競技一本で挑戦していく道を選ぶことを決意しました。

---:パフォーマンスの機会はご自身で営業をするのでしょうか。

瀬尾:そうですね、イベント会社さんに営業というかアタックしてみたり、あるいは他のパフォーマンスを行っている方々に仕事を紹介してもらったり、一緒にパフォーマンスをしたりと、「人とのつながり」というのを大切にして動いていきました。

---:これからに向けて目標を聞かせてください。

瀬尾:普段はやはりパフォーマンスの活動はメインなのですが、実際に競技をしているところを通した教育活動などを、もっと行なえると競技の普及につながると思います。なるべくその部分に時間もお金も費やしていきたいな、と思っています。

瀬尾選手を応援する!
《大日方航》

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