都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第3回【静かな闘志】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第3回【静かな闘志】

オピニオン コラム

都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第3回【静かな闘志】
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2014年12月30日に開幕する第93回全国高校サッカー選手権大会。開幕戦を飾るのは、今夏の全国高校総体で優勝し、2年連続16回目の出場となる優勝候補の一角、東福岡高等学校(福岡)と、7年ぶり2回目出場の東京都立三鷹高等学校(東京B)。

一回戦で優勝候補筆頭の東福岡と当たることになった三鷹高校。選手たちはどう感じ、どう戦っていくのか。

試合のカギを握る選手たちへインタビューを実施した。今回は武田啓介(たけだけいすけ)選手へのインタビュー。

三鷹高校サッカー部OBに取材するなかでも浮き彫りになった、この選手の特殊な経歴。高校2年生の6月までフォワードでプレーしていた選手が、キーパー不在の代だったということもあり、全く経験のない中でキーパーに転向、練習を積み全国への切符を勝ち取った。

三鷹高校サッカー部の佐々木監督が「チームの勝利は彼の成長なしには語れない」と評する武田選手の心情に迫る。


【OBコメント】

「武田君は、2年生までフォワードでプレーしていました。」
「2年生の6月からGKに転向して、選手権ではビッグセーブを連発しています。思い切りの良い飛び出しと、安定したキックを持っていると思います。空中戦でもほとんど負けません。」

【監督コメント】

「チームがここまで勝ち進んで来られたのは彼の成長なしには語れないポイントです。怪我も多かったれど、素人からキーパーをはじめて、ここまで一人前の選手になってくれたのは本当にチームにとって大きいことでした。」

***

---:高校2年生の6月まではフォワードでプレーしていたそうですが、キーパー転向にはどのような背景や気持ちがあったのでしょうか。

武田啓介選手(以下敬称略):一番は試合に出たいという気持ちでした。

---:フォワードのままでは厳しいと?

武田:正直、そう思いましたね…(笑)

---:フィールドとキーパーは大きく違うと思います。どういう点で苦労しましたか。

武田:キーパーといえばシュートストップというイメージがあったのですが、いざやってみたら裏のボールの処理とかクロスへの対応とか…。思っていたのと全然違っていて、そのギャップを埋めることが大変でした。

---:フィールドプレイヤーを長く経験していたことで、キーパーとして活かせることもあったのでは。

武田:ディフェンダーへの指示がしやすかったりしました。後ろからの景色は全然違ったので。

---:三鷹は都立で、私立に比べて練習時間の制限、環境面での違いもあると思いますが、どのように対応してきたのでしょうか。

武田:自分としては、シュートを打たれた時に、なぜそうきたのだろうか、どうしてそうなったのだろうか、というところを一回一回考えていました。時間も短いので、ひとつひとつのプレーをしっかりと意識して取り組むことが大切だと思っています。

---:全国を勝ち取るまで、選手権を勝ち抜いていくうえで支えになったものはありましたか。

武田:自分は途中からキーパーをはじめた初心者だったので、一から色々とキーパーのイロハを教えてくださった方々がいたことが支えになりました。

キーパーコーチがしっかり指導してくださったことはもちろん、ひとつ上の先輩はキーパーが6人いたので、それぞれの方に色々と教えてもらったり…。そういう方々の存在が大きな自分の力になっていましたね。

---:選手権が決まって環境やメンタルの面でも変わったことがありましたか。

武田:こうして色々な方が注目してくださったり、自分の場合はOBの方がキーパーグローブをプレゼントしてくださったりと、とにかく応援されていることを感じます。

メンタルの面では特にないですね…。いままでと同じように、一個一個のプレーをしっかりやっていくだけだと思います。

---:東福岡にも在籍しているような、上手い選手への対応は。

武田:自分たちの実力を自覚して、思いっきりあたって、やれることをきっちりやっていくだけだと思います。

---:予選でも私立の強豪校と対戦し、公立であることを意識したことはありましたか。

武田:あまりないですね…。どこが相手でも、「自分たちのやれることをやる」というのが全てです。強豪相手には特に意識するという以前に、普通の高校にも負けそうになったりするので…(笑)

---:優勝候補である東福岡高校と対戦することになってどう感じていますか。

武田:とても楽しみです。沢山ボールも飛んでくるだろうし、それを全部止めてやるぞ、という意識があるので。相手が技術をはじめとした多くの部分で上回っている分、自分たちの頭で考えてその都度対応していく、ということが必要になってくるのかなと思います。

---:日々の生活で心がけていることはありますか。

武田:特にはないですね。ただ、サッカーのことをずっと考えているようにはしています。意識はサッカー100%の生活ですね。

---:そういった状態の武田選手には失礼なのかもしれませんが、進学校でもある三鷹高校で、勉強を完全に無視することはできないという点もあるのでは。

武田:他の人がしっかり大学行ってくれるならそれでいいかな、と(笑)。ほんとうにいまはサッカー100%で考えているので、なにも勉強してないです(笑)。

一浪覚悟で、(大学に)入れるなら入れたらいいな…。くらいの気持ちですね。

---:サッカーを続けてきて、自身が成長した実感は。

武田:精神的にもすごく弱い性格だったので、サッカーをはじめて少しは強くなれたかなと思います。

---:三鷹のストロングポイントはどこにあると思いますか。

武田:粘り強いところですかね…。というか、ここしかないと思います(笑)

---:その、粘り強さを身につけるためには

武田:一年生の時には、監督がすごく厳しくて、そこで粘り強さのベースが身に付いた気がします。いまはかなりのびのびできているのですが、その中で自分たちで自分たちを律する、自分に厳しくする力が身についてきたと思います。

---:そんな佐々木監督に対して選手として感じることはありますか。

武田:キーパーをはじめたころは、公式戦でもすごく失点して…。でも、そんな状態だったにも関わらずスタメンとして起用し続けてくれたことには本当に感謝しています。

---:チームメイトに対しては。

武田:本当に感謝しています。自分がキーパーを途中からはじめたから、その分をカバーしようとしてディフェンダーたちは特に頑張ってくれて。最後の試合も、シュートというシュートはほとんど飛んでこなかったので。次の試合では、その恩返しとして「自分が全部止めてやる」というくらいの気合で臨みたいと思っています。

***

飄々とした物言いに潜む確かな自信。彼は戦いながら本物のキーパーになった。守備の時間帯が長くなると予想されている全国大会の初戦において、粘り強さを売りにする三鷹高校の最後の砦だ。

武田選手が活躍する時は、チームがピンチを迎えている時かもしれない。それでも彼のビッグセーブに期待したい。

***

次回は、三鷹のキャプテン巽健(たつみまさる)選手。選手権予選では1回戦から準決勝までの4試合で4試合連続ゴールという圧倒的な決定力を発揮した。三鷹の攻撃を支える注目選手だ。
《大日方航》

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