人を惹きつけるようなバイクが少なくなった、と思う。「オマエのレゾンデートルは一体何だ?」 と問い詰めたくなるバイクが溢れている、と思う。あらゆる意味の高度な個性を孕み、それを強調しながら生意気にも 「this is what I am!」 と言えるバイクにだけ僕は欲情するのだし、そうやってロードバイクという機材を楽しみたい、と思う。 だからSLX01を初めて間近に見たとき、ドキッとした。そのスイスデザインはどこにも隙がなく、どこにも破綻がなく、どこにも不粋なラインがなかったから。そうかと思えば全く未完成かつ不完全であるようにも見え、と同時に芸術的鑑賞に耐える美しさを持っていたから。そして、あえて没個性の群れを自ら離れんとしているように見えたからだ。 それは 「自転車の未来」 というテーマの、気鋭の若手デザイナーの手によるデザイン・スタディのようであり、一方で、コンピュータ言語をベースにした理路整然としたフォルムにも感じられる。 特に、そこいらのメーカーにはとうてい真似できないであろうセンスで描かれるグラフィックがいい。スローピングフレームとしては最も美しい角度でスロープするトップチューブのシルエットがもたらす、凛と張り詰める空気もいい。派手なディープリムを抱えてアスファルトを踏みしめ立つ様には、全く惚れ惚れする。