高弾性カーボンのピナレロニューモデル vol.2 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

高弾性カーボンのピナレロニューモデル vol.2

オピニオン インプレ
ONDAフォークの仕上がりは秀逸 絶妙なピナレロハンドリングを堪能する

ピナレロの代名詞ともなったONDAフォーク。その完成度は相当に高い。僕はピナレロの華やかさとそのハンドリングに惚れて3台を乗り継いできたが、FP5でコーナーをひとつ抜けたとき、当時 「ピナレロ・ハンドリング」 と呼ばれていた独特のステア特性の癖を掴み始めたときの感動が甦ってきた。
バイクに安心して身体を預けることのできる独自の直進安定性。コーナリングは痛快かつ意のまま。レーンチェンジは正確かつ自由自在。フォークのツメまで神経が通っているかのように車体をヒラリヒラリと操ることができ、このハンドリングだけでもピナレロを所有する価値は充分にあると個人的に思う。このウネウネとしたONDAフォークがプロ仕様のプリンスに搭載されてデビューしたとき、その醜い (と言われていた) ルックスに対して眉間に皺をこしらえた人は多いだろうが (僕もその一人だった)、性能を伴うとその形状に説得力が生まれてくるし、見慣れるとカッコよく見えてくるから不思議だ。

さらにフロントフォークの完成度の高さによって、フロントブレーキの効きは同価格帯バイクの群を抜いている。強固なクラウン部分がブレーキキャリパーを介してリムを鷲掴みにし、ブレードはたわむことなくホイールのハブシャフトを力強く押さえ込む。ブレーキ本体にデュラエースが付いているのかと思うほどよく効いてくれるのだ。
フォーク〜ヘッド周りがしっかりしているからだろうか、ハンドルに荷重し、フロントセクションに多く仕事をさせてやりながらダンシングすると良い走りをしてくれる。前荷重気味のダンシングで平坦路をクンクンと加速していくときの気持ちよさは思わず口元が緩んでしまうほど。ヒルクライムでも 「フロントセクションに多く仕事をさせること」 を意識してダンシングすると良く登ってくれるだろう。

素材や方向性が変わっても「らしさ」は健在 乗りこなしやすいオールラウンドフレーム

ホイールを剛性の高いものに変更して試乗したにもかかわらずマイルドな乗り心地は変わらない。タイヤから入力される衝撃の大小や速度の高低によらず、全域で快適性が高い。どちらかといえばフレーム本体は快適方向に振ってあるようで、さすがにハイエンドクラスに比べてしまうと限界域ではキレに欠ける面もある。しかし基本性能にロードバイクとしての不満はない。さらなる性能を求める人は軽量でカチッとしたホイールを買い足せばいい。
ただ、小さなサイズの試乗車にも長いステムと幅の広いハンドルが付いているのは気になった。せっかくだからMostパーツで統一したいところだが、身体にフィットさせるにはハンドル・ステムの交換が必要となるかもしれない。

適応性が高いのもFP5の特徴である。平坦コースからヒルクライムまで。 (ホイール交換が前提となるが) 反応性が活きるスプリントレースから快適なロングライドまで。 高いケイデンスで走るライダーからパワーライド系のサイクリストまで。 一つの目的に特化されてはいないものの、どんなライダーにも、どんなシーンにも幅広く適応する懐の広いフレームだと言える。ペダリングスキルが未熟なビギナーや、脚質がまだ明確になっていないライダーにもいいだろう。
そしてなにより、このシルエット。ピナレロバイクの素材は従来得意としていた金属からカーボンへとシフトしつつあり、今まで金属系純粋競技路線を歩んできたピナレロが “カーボン” と “コンフォート” というキーワードに対面して葛藤しているようにも思えるこの 「FP5」 というバイクだが、何物にも似ていない、一目でそれと分かる独特の佇まいを持っている。
例えば型破りな前後ONDAフォーク。例えば逆三角形断面が後方に向かってフレアしていく奇妙なトップチューブ。そこにエンジニアリング的な正義があるのかは甚だ疑問なダウンチューブの不自然な段差。それら全体を覆っているヌラリとした曲線。しかしこうしてロードバイクのシンプルな伝統的シェイプをわざと崩して歪んでいるところ、そのアンバランスさに独自の迫力が宿っているのもまた、FP5の確かな事実である。
《編集部》
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